お知らせ
専門医制度と連携したデータベース事業について
このたび、わが国の医療の現状を把握するため、関連する多くの臨床学会が連携し、外科手術症例のデータベース化事業が行われることになりました。
当院におきましても本登録事業に参加することになりましたので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
診療内容
和歌山ろうさい病院外科は日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会の認定施設であり、学会より認定された指導医、専門医により消化器外科、内視鏡外科、一般外科を担当しています。具体的には食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵がん、胆道がんなどの消化器がんの手術や食道裂孔ヘルニア、食道アカラシア、胆石症、消化管穿孔、痔などの様々な消化器良性疾患や鼠径ヘルニアなどの一般外科疾患の治療を行っています。
特に最近は腹腔鏡や胸腔鏡を用いた内視鏡外科手術に力を入れており(日本内視鏡外科学会技術認定医が手術を担当します)、食道がんに対する胸腔鏡下食道切除や胃がん、大腸がんに対する腹腔鏡下手術、腹腔鏡下胆のう摘出術、さらに鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術を積極的に行うなど、患者さんに優しい外科治療を心がけています。
なお、当院での腹腔鏡、胸腔鏡の手術の際には、必要に応じてハイビジョン3D内視鏡システムを用いることで、より詳細な手術を行うことが可能となっています。
臓器別、疾患別診療内容(→)の詳細については各々の項をご参照ください
スタッフ紹介
岩橋 誠 |
副院長 |
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山本 基 |
第二外科部長 |
宮澤 基樹 | 第三外科部長 平成13年 和歌山県立医科大学卒業 専門:消化器外科一般 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会専門医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本膵臓学会認定指導医 医学博士 |
桐山 茂久 |
第四外科部長 |
福田 直城 | 外科医師 平成26年 産業医科大学卒業 専門:消化器外科一般 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会専門医 |
話題
食道の病気
食道はノドと胃をつなぐ長さ25cm程度のくだ状の臓器です。食道に病気があると胸焼けがする、食事をするとしみる、食事が通らない、胸のつかえがある、などの症状が出てきます。これらの症状を認める場合は早めの受診をおすすめします。
1. 食道がん
1) 症状
小さい”がん”はほとんどが無症状ですが、食べ物を飲み込んだ時に胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだ時にしみたりすることがあり,早期発見のために注意すべき症状です。しかし、がんが少し大きくなるとこのような感じがなくなることが多く,検査を受けずに放っておかれることも少なくありません。癌がさらに大きくなるとつかえ感,飲み込みづらい感じが出て来るようになります。
2) 診断と治療
2012年4月に日本食道学会が食道癌診断・治療ガイドライン(改訂第3版)を発刊しています。私たちはそのガイドライン(図1)をふまえながらより具体的な診療指針に基づいて診療を行っています。上部消化管内視鏡(特殊光観察、拡大内視鏡を含む)、超音波内視鏡、マルチスライスCTおよびFDG-PETなどによりがんの進行具合を正確に診断して治療方針を決定しています。具体的には早期がんであれば内視鏡医により内視鏡的治療(内視鏡で腫瘍を切り取る)を施行します。進行癌では抗がん剤治療でがんを小さくしてから手術を行っていますし、状況によっては放射線治療を抗がん剤と併用して行う事もあります。
治療においては消化器内科および放射線科などの他の診療科と連携しながら、個々の患者さんごとに検討し、さらに患者さん自身と充分相談した上で最も適切な治療を選択しています。
図1.食道癌治療ガイドライン治療アルゴリズム
(日本食道学会 食道癌診断・治療ガイドライン(金原出版)
3) 食道がんの手術
食道がんの手術は患者さんにとっては身体への負担が最も大きな手術のひとつです。したがって手術の質はもちろんのこと、術後管理の方法も手術の成否に大きくかかわってきます。400例以上の食道がん手術執刀経験を有する食道外科専門医が中心となって手術を行っています。手術の方法は次に述べる胸腔鏡下手術を原則としていますが、病状によって開胸手術を行う事もあります。
[胸腔鏡下食道切除術]
当科では腹臥位胸腔鏡下食道切除術を行っています。体位は腹臥位として、胸を大きく切ることはせずに右側胸部の5~6カ所に5mm~10mmの小さな穴をあけ、そこからトロッカーと呼ばれる筒を通してフルハイビジョン高性能カメラ挿入し、炭酸ガス気胸下で手術を行っています。また腹部操作も腹腔鏡下の小さな傷で手術を行っています。
この方法は従来の開胸手術と異なり、痛みが少なく、離床が早い上、術後の呼吸機能低下が少ないなど多くの利点があり、合併症の頻度も非常に少なくなっています。ただし、昔に患った肺炎などによる胸膜癒着が激しい場合や胸部上部の巨大な腫瘍を伴う場合は適応外となります。また胸腔鏡下食道切除術は限られた施設でのみ行われている手術であり食道癌治療ガイドラインでは「現時点では研究段階であるが、将来的に期待できる治療法」といった扱いになっています。
開胸手術 胸腔鏡手術 モニターを見ながら手術を行います
4) 食道がんの手術前後の取り組み
食道がんの手術は患者さんにとっての負担がとても大きく、そのため術後肺炎などの合併症の頻度がとても高いと言われています。私たちは他の診療科と連携しながら合併症をできるだけ起こさないために様々な準備を行った上で手術を行います。特にリハビリテーション部の協力を得て術前より心肺機能強化訓練や筋力強化訓練などを行い、術後も術翌日より歩行訓練を行うなど積極的に周術期リハビリテーションを行い術後合併症軽減に成功しています。
2.その他の食道の病気
外科的な治療を必要とするその他の食道の病気には、食道粘膜下腫瘍、食道裂孔ヘルニア、食道アカラシアなどがあります。
1)食道粘膜下腫瘍
多くは良性で、症状が無く偶然発見される場合も多くあります。圧迫症状、狭窄症状があれば治療の対象となります。治療は切除が原則ですが、当科では胸腔鏡下切除を第1選択にしています。
2)食道裂孔ヘルニア
食道は食道裂孔という横隔膜の穴を通って腹腔内に入り胃につながります。この食道と胃の接合部を噴門と呼びますが、噴門が食道裂孔から上の胸の中(縦隔内)へ引き上がってしまい、それにつれて胃の一部も胸の中に引き上がってしまった病態を食道裂孔ヘルニアといいます。逆流症状が主であり、症状が強い場合は手術が必要となります。手術は引き上がった胃を腹腔内に戻し、逆流が起きないように胃を腹部食道に巻き付けて逆流が起きないようにします。また広がった食道裂孔を縫縮します。当科では腹腔鏡下手術を第1選択にしています。
3)食道アカラシア
食道と胃のつながり目のところに下部食道括約筋(LES)があります。食物が食道から胃に運ばれる際にはLESが緩んで食物を胃に速やかに流します。アカラシアはこのLESの働きが障害された病気です。すなわち常にLESが収縮した状態にあり、物を飲み込んでもLESが緩まないため飲み込んだものが胃に流れずいつまでも食道にたまってしまいます。このため物を飲み込みにくい、なにかつかえた感じがする、吐いてしまうなどといった症状を認めるようになります。治療は薬物療法や内視鏡下バルーン拡張術などがありますが、効果は長続きせず、多くは最終的に手術が必要となります。当科では腹腔鏡下手術(Heller-Dor法)を第1選択にしています。
胃の病気
1.胃がん
近年、本邦では胃がんは減少傾向にありますが、日本のがん統計では2010年の罹患数は男性で第1位であり、女性では第3位という依然頻度の高い疾患です。一方で、近年、その治療法の発展はめざましく、ごく初期の胃がんでは内視鏡を用いて病巣のみを切除することで根治できることがあります。また手術が必要な場合でも腹腔鏡を用いた体に負担の少ない方法で手術ができる場合もあります。
2014年5月に日本胃癌学会が胃癌治療ガイドライン(改訂第4版)を発刊しています。当科はそのガイドラインをふまえて具体的な診療指針を作製しそれに基づいて診療を行っています。分化型の粘膜がんや3cm以下の分化型の粘膜下層軽度浸潤がんなどは消化器科で内視鏡治療を行っています。内視鏡的治療の適応のない早期胃癌や漿膜浸潤(胃の外側までがんが顔を出していること)やリンパ節転移を認めない進行癌は腹腔鏡下手術(幽門側胃切除、噴門側胃切除、胃全摘)の適応としています。なかでも幽門(胃の出口)から4cm以上離れたリンパ節転移のない胃中部早期胃癌に対しては幽門を残して胃を切除する腹腔鏡下幽門保存胃切除を行い機能温存に努めています。一方、高度進行胃がんでは抗がん剤治療でがんを小さくしてから手術を行っています。非常に大きながんや広範な漿膜浸潤が予想される場合は全身麻酔下で腹腔鏡を用いて腹腔内を観察する腹腔鏡検査を行い、治療方針を決定することもあります。
[胃がんに対する腹腔鏡手術]
ハイビジョン3Dシステムを用いた完全腹腔鏡下胃全摘術
上腹部中心に6カ所に5mm~10mmの小さな穴をあけ、そこからトロッカーと呼ばれる筒を挿入します。そこからフルハイビジョン高性能カメラ挿入してテレビモニターを見ながら手術を行います。手術に参加する医師が同時に同じ画面を見て手術を行いますので充分確認しながら、より安全に手術をすることができます。腹腔鏡補助下手術の場合は上腹部を4~5cm切開しおなかのなかで切除した臓器を取り出し、再建(胃と腸を吻合するなど)を体外で行います。完全腹腔鏡下手術(写真1-③)の場合はおへその傷を少し広げて切除臓器を取り出し、再建は腹腔鏡下で体内で行います。最近はこの完全腹腔鏡下手術を行う場合が増えています。腹腔鏡下手術は傷が小さいため術後の痛みが軽度であり、翌日より普通に歩いていただけています。術後の癒着も少なく腸の運動の回復が早くなります。また美容的にも優れています。
2. 胃粘膜下腫瘍
多くは無症状で内視鏡などで偶然発見される場合も多くあります。70%は消化管間葉系腫瘍(gastrointestinal stromal tumor; GIST)であるため注意が必要です。出血や圧迫症状、狭窄症状があれば手術の対象となります。症状がなくても2cmを超えるもので増大傾向のあるものや超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)で病理学的にGISTと診断されれば手術の適応となります。手術は胃部分切除が原則です。当科では腹腔鏡下胃部分切除を第1選択にしています。また胃噴門に近い場合や内腔発育型は消化器科と協力して腹腔鏡、内視鏡合同手術(LECS/CELS)を行っています。
胃内発育型GIST 外科医と内視鏡医が合同で手術を行います
大腸の病気
大腸がん(結腸がん、直腸がん)
近年、高齢化や食の欧米化により、本邦では増加している疾患です。大腸がんは大腸の粘膜から生じる病気です。症状がないことも多く、集団検診で便潜血が陽性と診断され、早期に発見すれば内視鏡での治療も可能です。進行すると便に血が混じったり、便秘、腹痛などの症状がみられ、手術が必要となります。
症状
初期は無症状。進行すると下血、便秘、腹痛、腸閉塞(注1)。
(注1) 腸の通過障害で、便で腸内が詰まる疾患です。腹痛や嘔吐の原因となります。
主な検査
大腸内視鏡検査、腹部CT検査、注腸透視検査、腹部超音波検査など
治療方法
基本は大腸癌治療ガイドラインに沿って治療を提示し、個々の患者さんの病態や生活環境に応じた最適な治療を提供します。
1) 手術
体への負担が少ない腹腔鏡下大腸手術を原則としています。手術前に腹部CT検査を施行して大腸の血管像を把握します(図1)。腹腔鏡手術とは今まで行われていた腹部を大きく切開するのではなく、1cmの孔を開けて腹腔鏡を挿入し腹腔内をハイビジョンモニターに映し、3-4箇所の同様の孔を開けて病気の部分を切除し、最後に小切開から病変部を摘出します(図2)。傷が小さく、術後の痛みが少ないだけでなく、手術時に手術チーム全員が同じ画像を見てディスカッションが可能であり、腹腔鏡に特有な、近接による詳細な解剖(血管、神経やリンパ管)が認識でき出血も少ないです。従来難易度の高かった直腸がん手術では3D腹腔鏡を使用し直腸周囲臓器や自律神経などのダメージを軽減させ、排尿障害などの術後後遺症を減らすことができます。年間約60-90例の大腸癌手術を施行しており、腹腔鏡手術の割合は結腸がんの約75%、直腸がんの約70%となっています。
また、当院では大腸周囲の膀胱や子宮などの複数の臓器にまたがる病変に対しては、泌尿器科、産婦人科などと密に連携し合同チームで手術を行います。
2) その他
術前治療
①肛門に近い直腸の進行がんに対しては放射線+抗がん剤治療を先に施行します。がんが小さくなり、全例ではありませんが肛門温存が可能となり、術後合併症の減少などの利点があります。
②腸閉塞の場合、術前に腸にたまった便をだすため、大腸内視鏡下に腸管をひろげる腸管ステントを留置し、術前状態の改善後に手術を行います(図3)。
③遠隔転移(肺、肝や腹膜など)に転移がある場合は点滴による抗がん剤などを用いて治療を行い、その効果により切除が可能となれば手術を行います
術後補助化学療法
手術で摘出したがんを用いて顕微鏡検査(病理検査)を行い、がんの進行度を確定します。進行度に応じて、3-6ヶ月の抗がん剤治療を行います。
がんの再発、切除不能がんに対して
大腸がんでは全身化学療法の進歩は目覚しく、ここ10年余りはで使用できるさまざまな薬が登場し、延命効果が2-3年までのびています。がんの遺伝子検査によって治療効果が予測できる薬もあります。患者さんの年齢や全身状態など個々の状態を相談し、最適の治療を選択します。
その他の疾患
がん以外には大腸穿孔による腹膜炎、虫垂炎、腸管過腸症などが手術の治療適応になります。
① 大腸穿孔による腹膜炎
大腸憩室炎(腸壁の筋層が消失し、袋状になっている部分に便が溜まり炎症をおこす病気)や便による腸閉塞が原因となり、大腸の壁が破れて便が腹腔内に漏れることにより、本来無菌である腹腔内で細菌が増殖します。便には大腸菌などの多量の菌が存在するため、発症後すぐに敗血症、多臓器不全に至る場合があり、緊急手術が必要となります。
②虫垂炎
右下腹部に存在する虫垂が腸内容(便や糞石)で閉塞し腫大する病気で、一般的にもうちょうと呼ばれています。約半数のひとは抗生剤などによる保存的治療を行います。当院では年間約20例の手術を行っています。手術方法は従来の右下腹部の小切開の手術から、現在、90%は腹腔鏡下手術を行っています。
③腸管過腸症
腸捻転の原因となることがあります。腸捻転は内視鏡で修復しますが頻回に繰り返す場合には腸管切除の適応となります。
すい(膵)臓の病気
すい臓は胃の裏側、背中近くにあります。
内分泌機能、外分泌機能とよばれる2つの主な機能を持ちます。内分泌とはホルモンを分泌することです。すい臓から出る主なホルモンとして、血糖値を下げる『インスリン』があります。そのためすい臓の病気ではインスリンが出なくなり、糖尿病となることがあります。特にすい臓に腫瘍(しゅよう)ができると、糖尿病が急激に悪化することがあります。
また、外分泌機能では、『すい液』という消化液を作っています。すい臓の病気では『すい液』が出なくなり、食物を消化できないことで栄養不良、体重が減少する、といったことが起こります。
また、すい臓の中を、胆汁(たんじゅう)の通り道である胆管が通過するため、すい臓に腫瘍ができると、黄疸が現れることがあります。黄疸になれば、白目や皮膚が黄色くなり、全身が痒くなります。
そのほかに、背中やおなかの痛みが起こることがあります。
これらの症状がある方は、精密検査をお勧めします。
- すい臓がん
人口の高齢化により、すい臓がんは近年増加しています。肥満や糖尿病といった生活習慣病はすい臓がんのリスクであることが知られています。
すい臓がんは他のがんに比べて予後が悪いことが知られています。がんと診断された時点ですでに「転移(血管やリンパ管を通って他の臓器で増殖すること)」していることが多いのが、ひとつの大きな原因です。そのため、早期発見が非常に重要です。当院では『MDCT(多列検出器型CT)』や、『3テスラMRI』と呼ばれる最新の機器を用いて診断しています。
病期(ステージ)によって治療方針は異なります。当科では膵癌診療ガイドライン(金原出版)に沿って適切な治療方針を提供しています。すなわち、手術療法、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法、またはそれらの組み合わせ(集学的治療といいます)により、患者さんそれぞれに合った治療方法を行っています。 - 膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう)
すい臓にできる、粘液(ドロッとした液)を含む『のう胞」』を作る腫瘍のことをいいます。英語名を略してIPMNと呼ばれます。良性のことが多い腫瘍ですが、一部に悪性化する(=「がん」になる)ものがあります。良性の段階では治療をする必要はありませんが、必ず経過観察を行い、がんになる可能性が疑われれば手術が勧められます。 - すい臓にできる他の腫瘍
他にも、すい臓には良性のものから悪性のものまで様々な腫瘍ができる可能性があります。当科では前述した最新の検査機器を用いて、すい臓の病気の診断、経過観察を行っていますので、すい臓の病気が心配になれば、是非一度ご相談ください。
肝臓、脾臓(ひぞう)の病気
私たちが主に扱う肝臓の病気は、肝臓がん(原発性、転移性)、肝臓の中に石が溜まる肝内結石症、肝臓の中に水の溜まった肝のう胞、膿のたまった肝膿瘍などがあります。 肝腫瘍に対しては肝切除を行いますが、最新の機器と技術を駆使し、90%は無輸血で手術をしています。
また手術以外の治療として、肝動脈塞栓術(放射線科が担当)やマイクロ波・ラジオ波凝固療法などを病状に応じて行い、手術に匹敵するくらいの成果(肝細胞がんで大きさ・個数の程度により異なりますが、全体で5年生存率50%)を挙げています。肝内結石に対しては、内視鏡医と協力して内視鏡下に鉗子で摘出します。肝嚢胞に対しては、巨大で腹部の圧迫症状や感染のあるものが治療の対象となり、経皮的な穿刺、ドレナージや腹腔鏡による治療も可能です。
脾臓は免疫能にかかわったり、古くなった血液を壊したりするところですが、必要以上に血液を破壊する場合があり(脾機能亢進症)、脾臓を取らなくてはなりません。最近、私達は腹腔鏡下に小さな傷で手術しています。 それぞれ病状に応じた、その方にあった手術を行います。
胆道の病気
胆道(たんどう)とは?
大便(うんこ)のあの茶色は,どこからくるのでしょう?じつは,胆汁(たんじゅう)という琥珀色の消化液がもとになっています.胆汁は,肝臓でつくられています.肝臓のすみずみで,24時間・365日作られている胆汁は,毛細胆管→胆管→総胆管へと集まってきます.総胆管に集まってきた胆汁はやがて十二指腸のなかに流れ出て,食べたものと混ざりあい,脂肪の分解・吸収に役立っています。ヒトでは,総胆管の途中に、胆汁を濃縮して貯蔵しておくための,胆のう(たんのう)というふくろがあります。(胆のうがない動物もいます).胆管や胆のう,といった胆汁の通りみち・・・これらをまとめてわたしたちは「胆道」と呼んでいます。
胆道の病気には次のようなものがあります。
「胆石症」
胆道に石ができる病気を「胆石症」(たんせきしょう)といいます。石のできる場所によって「肝内結石症」(かんないけっせきしょう)とか「胆のう結石症」(たんのうけっせきしょう)、「総胆管結石症」(そうたんかんけっせきしょう)などと呼び方が変わります。
「胆のう炎・胆管炎」
胆石が原因となって、胆のうや胆管で炎症がおこることはしばしばあることですが、胆石もないのに炎症がおこることがまれにあります。このような場合は、ほかにさまざまな原因が隠れていることがあります。「原因のよくわからない胆のう炎・胆管炎」を指摘されたことのある方は、ぜひご相談ください。
「胆のうポリープ」
胆のうの中にできるポリープのことです。大きさや形などによって、「がん」をうたがわねばならないことがあります。「胆のうポリープ」があるといわれたことのある方は、ぜひご相談ください。
「胆道癌」
胆道にできる悪性の腫瘍(しゅよう)=がんのことです。これも、できる場所によって「胆管細胞癌」(たんかんさいぼうがん)・「胆管癌」(たんかんがん)・「胆のう癌」(たんのうがん)・「十二指腸乳頭部癌」(じゅうにしちょう にゅうとうぶがん)というように呼び方が変わります。いずれの癌も悪性であることには変わりはなく、できるだけ早期の発見が大切です。胆道癌は患者さんの数こそ多くはありませんが、近年少しずつ増えています(グラフ)。
どんな症状がでるの?
では、胆道の病気になるとどんな症状がでるのでしょう?おもな症状として、
- 黄疸おうだん(皮膚や眼球がんきゅう結膜けつまく(眼の白いところです)が黄色くなる、からだじゅうがかゆくなる、紅茶の色のような尿が出る、白い色の便が出る)
- 発熱
- 右の脇腹や背中が痛む
があげられます。血液検査では、ほとんどの病気で肝臓の数値の異常がみられます。このような症状がある方、数値の異常を指摘された方はぜひご相談ください。
胆道の検査は?
胆道は、胃や大腸の病気のように内視鏡(カメラ)を入れて直接見ることがむずかしいところなので、超音波検査(エコー)、CTスキャン、MRI、超音波内視鏡など、いろいろな検査を組み合わせて,総合的に診断します。とくに、癌をうたがった場合には、くわしく調べます.
なお、ほとんどの検査は外来でおこなうことができます。
治療法は?
胆石症
炎症が軽い場合や、これまでにお腹の手術をうけていない人であれば、「腹腔鏡下胆のう摘出術という手術で胆のうを切り取ります。これは、大きくおなかを開けずに、1箇所(単孔式)から4箇所の10mm以下の小さい傷で胆のうを摘出するものです。炎症が軽い患者さんでは、さらに細い道具をつかって、痛みやきずあとをより小さくするようにしています。わたしたちの外科では、80%以上の患者さんでこの手術を行なって、良好な結果を得ています。手術後3~5日ほどで、ほとんどの方が退院できます。なお、 胆のう以外の場所にできた結石は、手術以外のいろいろな治療法がありますのでご相談ください。
「胆のう炎」や「胆のう結石」に「胆のうがん」が合併することがまれにあります。胆石症を指摘されたことがある方は、放置せず、定期的に検査を受けられることをおすすめします。
胆道癌
いまのところ、胆道癌は薬だけで治すことはむずかしく、手術が最優先です。
ごく早期の場合、胆のうを摘出するだけですむ場合もありますが、多くの場合,胆管や胆のうと肝臓や膵臓の一部をいっしょに切除しなければなりません。がんのできた場所によって手術法は違いますし、進行の程度によっては抗がん剤治療や放射線治療が必要になることもあります。一般的に、胆道がんは悪性度が高いので早期に見つけないと、なおりにくくなります。具体的な治療内容については担当医と十分にご相談ください。
職業性胆管癌について・・・
2012年、大阪の印刷工場で働いていた人のなかに相次いで胆管癌が見つかりました。発がん性の可能性がある物質として、「ジクロロメタン」および「1,2-ジクロロプロパン」という物質が指摘されています。現在、厚生労働省・労働者健康安全機構では、胆管癌とこれらの物質との関連性について調査・研究を行なっています。このような物質や有機溶媒に長期間・高濃度接触した可能性のある方、ご心配のある方は、ぜひ一度ご相談ください。(詳しくはここをクリック)
肛門の病気
痔は(やまいだれ)に寺(てら) と書き、むかし寺で治療したのか?寺まで持っていく病気?兎に角やっかいな病気です。痔は、症状がないものも含めると、成人の半数以上にみられるといわれており、ひそかに痛みや出血で悩んでいる方も多いと思います。
痔疾患は、
- おしりのうっ血が原因で、血管の一部がふくれあがる痔核(痔疾患 の約半数を占める)
- 硬い便などにより肛門の上皮に傷ができる裂肛
- 細菌の感染によって、肛門の周りに膿がたまる肛門周囲膿瘍や痔瘻
に分けられます。
病状の軽度のものでは、便通を整えるなどの日常生活に注意し、薬(坐薬や軟膏)を使うことでよくなるので、できるだけ薬で治療します(全体の70から80%)。しかし、疼痛・出血や脱出などがひどい場合には手術も考えなくてはなりません。痔の手術は、20~30分程度で終わります。またお薬では治りにくいですが、手術がどうしてもイヤという患者さまには、外来での硬化療法や輪ゴム結さつ術も積極的に行なっています。
痔は、人類が直立歩行を始めたときから宿命となった病気です。それぞれの患者さんの病状に応じた、最適と考えられる治療を個別にご相談しますのでお気軽に受診して下さい。
ヘルニア
「ヘルニア」とは、からだの組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。最も多いのは下腹部のの太ももの付けねあたりに出る鼠径(そけい)ヘルニアです。一般の方には「脱腸」と呼ばれている病気です。
ここでは成人の鼠径ヘルニアと大腿(だいたい)ヘルニア、そして腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアについてお話します。
成人の鼠径ヘルニア・大腿(だいたい)ヘルニア
比較的多い病気です。重いものを持ったり、咳をした時に下腹部から陰嚢にかけて、膨れたり、違和感を感じて来院されます。
子供の頃からあったヘルニアが成人になり膨らんできたものを外鼠径(がいそけい)ヘルニアと言い、年齢と共に腹壁が弱くなって、そこから腸が脱出する内鼠径(ないそけい)ヘルニアと言います。また、大腿ヘルニアは中年以降の経産婦に多くみられます。
いずれも手術をしないと治りませんが、通常、翌日より歩行が可能です。合併症がなければ、術後3から5日で退院していただけます。腹腔鏡を使った痛みの少ない手術も取り入れています。
ヘルニアでお困り方はお気軽に受診してください。
最近5年間の当院外科における年次別手術件数
当院手術症例における胃がん、大腸癌の5年生存率
(Stage分類はUICC 第7版による)
胃がん 2009年-2013年 |
大腸がん 2009年-2013年 |
||
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全例 | 68.1 % | 全例 | 73.7 % |
Stage I | 88.1 % | Stage I | 93.6 % |
Stage II | 81.5 % | Stage II | 79.9 % |
Stage III | 41.0 % | Stage III | 77.1 % |
Stage IV | 25.7 % | Stage IV | 17.6 % |
患者さまへ
専門医制度と連携したデータベース事業について
このたび関連する多くの臨床学会が連携し、わが国の医療の現状を把握するため、『一般社団法人 National Clinical Database』(以下、NCD)を立ち上げ、データベース事業を開始することになりました。
この法人における事業を通じて、患者さんにより適切な医療を提供するための専門医の適正配置が検討できるだけでなく、最善の医療を提供するための各臨床現場の取り組みを支援することが可能となります。
何卒趣旨をご理解の上、ご協力賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
- 本事業への参加について
本事業への参加は、患者さまの自由な意思に基づくものであり、参加されたくない場合は、データ登録を拒否して頂くことができます。
なお、登録を拒否されたことで、日常の診療等において患者さまが不利益を被ることは一切ございません。 - データ登録の目的
患者さまに向けたより良い医療を提供する上では、医療の現状を把握することは重要です。
NCDでは、体系的に登録された情報に基づいて、医療の質改善に向けた検討を継続的に行います。
NCD参加施設は、日本全国の標準的成績と対比をする中で自施設の特徴と課題を把握し、それぞれが改善に向けた取り組みを行います。
国内外の多くの事例では、このような臨床現場主導の改善活動を支援することにより、質の向上に大きな成果を上げています。 - 登録される情報の内容
登録される情報は日常の診療で行われている検査や治療の契機となった診断、手術等の各種治療やその方法等となります。
これらの情報は、それ自体で患者さま個人を容易に特定することはできないものですが、患者さまに関わる重要な情報ですので厳重に管理いたします。
情報の取り扱いや安全管理にあたっては、関連する法令や取り決め(「個人情報保護法」、「疫学研究の倫理指針」、「臨床研究の倫理指針」、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等)を遵守しています。
登録されたご自身のデータをご覧になりたい場合は、受診された診療科にお問い合わせ下さい。 - 登録される情報の使われ方
登録される情報は、参加施設の治療成績向上ならびに皆さまの健康の向上に役立てるために、参加施設ならびに各種臨床領域にフィードバックされます。
この際に用いられる情報は集計・分析後の統計情報のみとなりますので、患者さま個人を特定可能な形で、NCD がデータを公表することは一切ありません。
情報の公開にあたっても、NCD内の委員会で十分議論し、そこで承認を受けた情報のみが公開の対象となります。 - お問い合わせ
本事業に関するお問い合わせは、受診された診療科またはNCD事務局(NCDホームページ)までご連絡ください。