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呼吸器内科

呼吸器内科の概要

「咳が出る」、「痰がからむ」。「息が苦しい」「胸が痛い」などの症状を伴うものから、胸部X線写真の異常、呼吸機能検査の異常など症状の全く見られないもの、さらにはいびきや眠気が問題になるものまで幅広い病状があります。呼吸器内科では、呼吸器専門医を中心に、外来、入院を通じエビデンスに基づいた治療方針でチーム医療を行い、診療に当たっています。

 

  • 呼吸器内科の診療内容

肺がん・悪性胸膜中皮腫に対する早期診断、集学的治療、緩和医療

間質性肺炎・肺線維症に対する診断・治療

睡眠時無呼吸症候群に対する診断・治療

呼吸器感染症に対する診断・治療

気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患に対する治療・患者指導

慢性呼吸不全に対する在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法

 

 

1. 肺がん

 日本人の死因の第一位はがんですが、そのうち肺がんが最も多く、年間約7.5万人が亡くなられています。しかし、肺癌領域における治療は進歩しており、分子標的薬・免疫療法など期待できる治療法が臨床導入されています。当院では肺がんに関して、呼吸器内科、放射線科、病理検査部と毎週のカンファレンスを通じて緊密な連携をとり、最新の知見を取り入れながら、最適と思われる治療を選択しています。

 当科では、術後化学療法、化学放射線治療、進行期の化学療法や免疫療法を行っています。近年、生活の質(QOL)の向上を考慮し、外来化学療法も多くなり、多くの患者さんが2コース目からは外来で治療されています。また、悪性胸膜中皮腫や縦隔腫瘍の治療も行っています。また、緩和ケアチームとも連携しながら積極的な症状緩和に努めています。

 肺癌診断のための気管支鏡検査では、EBUS-GS/TBNAなどを積極的に取り入れて診断の向上に努めています。また、気道狭窄に対する気管支内視鏡を用いたステント療法、マイクロウェーブ治療などのインターベンションも行っています。

2. 間質性肺炎

 間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる部分を中心に炎症が起こる病気の総称です。炎症によって徐々に肺胞壁が厚く硬くなります(線維化)。そうなると肺がうまく膨らまなくなるため、息苦しさや咳が出ます。進行すると呼吸不全になることもあります。

 種々の病型があり、進行の速度も様々なので、画像診断や血液検査などを行い、必要時は気管支内視鏡や外科的肺生検などによる確定診断を行うことが大切です。当科では、気管支内視鏡検査を実施し、放射線科、病理部と連携をとって診断をしています。間質性肺炎には難治性のものが多く、慢性的な呼吸困難をきたす疾患で、抗線維化薬、ステロイドや免疫抑制剤などで治療します。また、定期的に和歌山県立医科大学呼吸器内科と検討会を行い、適切な治療法を検討しています。

3. 睡眠時無呼吸症候群

 昼間の眠気や就寝中のいびきがある場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome;OSAS)は、ポリソムノグラフグラフ(PSG)を用いて、睡眠中の無呼吸や低呼吸の頻度と自覚症状により診断します。

 OSASでは睡眠中にからだの中の酸素濃度が低下し、息苦しさによって睡眠が浅くなり、十分な睡眠が得られないために、記憶力・集中力の低下、疲労感、日中の眠気などの症状が起こります。重症のOSASでは心筋梗塞や脳梗塞などの病気のリスクが増加し、さらに交通事故を起こす危険性が増加することがわかっています。中等症・重症のOSASを診断し治療することは、自身の健康のみならず、周囲の方の安全のためにも大切です。当科では、PSG検査やCPAPの導入を行っています。

4. 呼吸器感染症(肺炎・肺化膿症・膿胸・肺結核・非結核性抗酸菌症など)

 肺炎は、細菌・ウイルスや真菌などの病原微生物により肺に炎症を起こす病気です。大きく分けると細菌による細菌性肺炎と細菌以外のマイコプラズマ、クラミジア、ウイルスなどによる非定型肺炎があります。診察所見・胸部画像・血液検査・尿中抗原検査・喀痰培養検査などで病原微生物を推定し、適切な診断・治療を行います。肺組織の構造が破壊されて肺膿瘍や胸腔内に感染を起こす膿胸では長期間の抗菌薬投与、膿胸に対しては胸腔鏡を用いてドレナージ処置を行います。

 肺結核は、結核菌による病気で人から人に感染し、和歌山県は全国平均より発症率が高いです。胸部画像・血液検査・喀痰培養検査で診断します。3~4種類の抗結核薬を6~9か月確実に服用することにより、多くの患者さんで治癒します。隔離のための入院加療が必要な場合は、国立病院機構和歌山病院と連携して治療を行います。

 非結核性抗酸菌症は、結核菌以外の抗酸菌である非結核性抗酸菌による病気で、土壌や水中などの自然環境に広く存在しており、人から人へと感染することはありません。喀痰培養検査で2回以上菌が確認されれば確定診断となります。数年以上かけてゆるやかに進行しますが、症状や胸部画像の悪化があれば、同定された原因菌に対して複数の抗菌薬を組み合わせて年単位での治療を行います。

5.気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD・肺気腫)

 呼吸器疾患の自覚症状の多いものとして「咳」があり、その原因として気管支喘息とCOPDは重要な疾患です。両者はありふれた疾患ですが、正しく診断、治療されていないケースもあります。当科では、胸部レントゲン、胸部CT、肺機能検査など一般的な検査に加え、必要に応じて呼気FeNO測定や気道抵抗検査なども使用し適切な診断、治療を行っています。

 気管支喘息患者さんのなかには適切な薬物治療を行っても症状や発作が十分に改善しない難治性喘息の方がおられます。そのような患者さんに対して、注射の生物学的製剤(抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-4/13抗体など)を用いた治療も行っています。治療費が高額のため、自己負担額を少なくできる高額療養費制度についても説明し、治療選択を行っています。

 COPDは喫煙などにより慢性の咳、痰、息切れをきたす疾患で、肺癌など合併症の多い疾患であり、徐々に呼吸機能低下を招くため、早期の診断と適切な治療が必要です。

 

呼吸器疾患における新技術

気管支鏡検査は肺癌の診断や治療に使用されます。近年様々な新しい方法や光学機器が開発されつつあります。以下に当院で使用している機器や方法についてご紹介します。

【気管支鏡】

①クライオ(凍結)生検 

 クライオ生検は、気管支鏡検査の生検方法の一つで、クライオプローブという凍結凝固装置を用いて組織の一部を凍らせて、検体を採取します。プローブで直接組織を凍らせて生検するので、従来の気管支鏡検査の肺生検よりも大きな検体を採取でき、組織の挫滅が少ないことが特徴です。主に、間質性肺炎の診断に用いて、治療方針を決定できます。

②コンベックス走査式超音波気管支鏡(CP-EBUS)

 縦隔肺門リンパ節や縦隔腫瘍などの気管・気管支周囲の病変に対してはコンベックス走査式超音波気管支鏡(CP-EBUS:気管支鏡と超音波が一体となった内視鏡)で診断します。CP-EBUSは経気管支的に超音波で病変をリアタイムに確認しながら、穿刺生検が可能です。超音波のカラードップラーモードにより、血管を避けて正確に検体が安全で確実に採取できます。また肺癌などの悪性疾患だけでなく、サルコイドーシスや結核などの良性疾患の診断にも役立ちます。

 

【局所麻酔下胸腔鏡検査】

 胸水の原因となる疾患は様々ありますが、胸水穿刺で胸水の性状を検査するだけでは診断できないことがあります。局所麻酔下胸腔鏡検査は胸水をドレナージ(チューブを挿入して水を抜くこと)する際にあける孔を利用して簡便かつ低侵襲に、また胸膜を観察しながら病変部を狙って組織を採取できるので、診断率が向上します。

 近年社会的問題となった石綿関連疾患である悪性胸膜中皮腫も胸水穿刺のみでは診断がつかないことがあるため、当院では胸水症例は積極的に局所麻酔下胸腔鏡検査を行っています。

 また、膿胸の治療にドレナージを行いますが、ドレナージチューブの留置のみでは病状が改善しないことがあるため、当科では局所麻酔下胸腔鏡検査を行い、胸腔内の膿汁を排出できるようにしています。

 

スタッフ紹介

辰田 仁美 呼吸器内科部長
女性専用外来(兼)
働く女性健康研究センター長(兼)
平成7年 和歌山県立医科大学大学院修了
専門:総合内科、呼吸器疾患、女性外来(性差医療)、漢方
日本内科学会総合内科専門医
日本呼吸器学会専門医
日本東洋医学会漢方専門医
日本医師会認定産業医
インフェクションコントロールドクター
医学博士
庄野 剛史

第二呼吸器内科部長
平成18年 和歌山県立医科大学大学院修了
専門: 総合内科、呼吸器疾患、糖尿病
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
インフェクションコントロールドクター
医学博士

前部屋 賢 呼吸器内科副部長
平成25年 山口大学医学部卒業
専門:呼吸器疾患、内科全般
細 隆信 アスベスト疾患センター長
昭和53年 和歌山県立医科大学卒業
専門:呼吸器内科、内科一般、肺癌、塵肺
日本内科学会総合内科専門医
日本呼吸器学会呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医
日本医師会認定産業医
インフェクションコントロールドクター

診察日・担当医表

臨床実績

  令和4年度
外来患者数 13,724名
入院患者数 643名
肺癌入院患者数 70名
気管支鏡検査 19件
超音波気管支鏡ガイド下経気管支的リンパ節生検 3件
CTガイド下肺生検 106件
局所麻酔下胸腔鏡検査 13件

 
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